「いやすみませんね、キタさん。」
となりのデスクで報告書に追われている同僚さんが謝ってくれた。
とっさに他の社員をかばっていた事に気づいてくれたらしい。
離れたデスクの方では「キタさんがキレた」と笑っていた。
まあその程度の反応が、今の私には助かる(笑)
結局全員が日報をまとめて外回りに出かけられたのは、
昼近くなってからだった。決してサボッているわけではない。むしろ必死だ。
こんな6重報告を毎日やらされていれば、時間だけが消費されていくのは当たり前だ。
印鑑でいつかとんでもない事になると予想したのは私だけではないはずだ。
「キタさん、ちょっといいですか。」
夕方になって、後輩がこっそり声をかけてきた。
「朝、上司さんから電話、あったじゃないですか。」
「ええ。私が喧嘩したヤツね。」
「アレなんですけど。聞いた話では、上司さん。
コッチへ電話かけてくる前に隣の事務所に電話して、
いまウチの事務所に何人残っているか事前に見張らせたそうです。」
ほうーーーー。
だから「ウソつけ!」って言ったのか。ふーん。
冷戦時代のソ連みたいな事、やってたんか。
明日出張から帰ってきて、ひょっとしたら
「なぜウソついた!」って言ってくるかもな。
まあそしたら、
「はいウソつきました。ムカついたんで。」
と答えるつもりだ。